戦略研究所
                   
高速支援艦の整備
 最近の海軍のトレンドとして、高速艦の積極的な活用が盛んだな、と感じています。
 それは、大戦前後の高速戦艦や駆逐艦の高速化等、戦闘艦の高速化とは少し趣を 異にしたものであるようです。
 主に、輸送艦の高速化です。
 そもそも各国海軍の補助艦には、補給艦や給糧艦、給兵艦、給油艦、揚陸艦はあっても 純然たる輸送艦はあまり存在しませんでした。
 このような現状に対し、車両や物資を高速で輸送する艦船の必要性が訴えられたのか、 米海軍を初めとするいくつかの海軍において、民間の高速船を借り上げて輸送艦として 運用する例が散見されるようになりました。
 もしかすると経緯は逆で、大型の高速船が一般化してきたという事実があり、これを 海軍として利活用する用途を探る目的で、先ずは輸送艦として試用してみているのかも 知れません。
 いずれにせよ、事実としてウェーブピアサー型フェリーや高速貨客船をリースで海軍が 運用する例が増えてきていることは確かです。
 陸上自衛隊ですら、機動演習においてウェーブピアサーに戦車を載せて輸送する訓練 (ほぼ実験に近い)を実施しました。
 このようなトレンドに鑑み、連邦も一部の補助艦を高速化する検討を始めました。
 補助艦と言ってもなんでもかんでも、ではありません。海洋観測艦や救難母艦を高速化 することにあまり意味がないことは自明の理です(救難母艦自体は高速化せずとも、携行 している救難艇が高速なので問題とはならない)。
 高速化することに意味がある艦種はやはり、
 ・物流に関わる艦種:輸送艦
 ・迅速に現地展開が求められる艦種:補給艦、及び工作艦
あたりになるかと思料します。
 また、艦体構造のできる限りの共用化を推進します。これら三艦種を連続して開発する にあたり、全く異なる設計で具現化するのでは、あまりに非効率です。
 でき得れば、ブロックの交換で輸送艦、補給艦、工作艦の用途を成す艦型にしたいと 考えています。
 これについて、輸送艦は第一世代艦と同じくコンテナ船とすることを考えています。
 コンテナそのものをブロックと見立てることができ、同じサイズで補給機能を持たせた ブロックを換装することで補給艦とすることができます。
 工作艦は少し手間が掛かりますが、作業ステージを外装すること以外は輸送艦や補給艦 と同じように物資を搭載・輸送するための格納エリアを持つことで実現できるはずです。
 上記のコンセプトに合致したデザインベースとしては、「2001年宇宙の旅」に登場する 木星圏探検船ディスカバリーのようなイメージが適切でしょう。
 背骨のようなシャフトを据え、乗組員区画のある艦体前部を魚の頭のようにシャフト 前部に。
 推進機関、航行機関を尾ひれのようにシャフト後部に取り付け、シャフトの周囲に ブロック(コンテナ)を取り付ける形態で実現するのです。
 高速化は、大出力の推進機関と複数のジャンプコアを持つ大型の複合航行機関で実現し、 輸送艦としての能力は3,400TEU程度の規模を想定します。
 現代の大型コンテナ船と比べると比較的小型のコンテナ船の規模ですが、高速であること、 また軍用であることからむやみに大型化することのデメリットも大きいと考え、このような サイズとすることにしました。それでも載貨重量は74,000tを超過します。

 以上の検討を基に、高速輸送艦、高速補給艦、工作艦を整備しますが、これらのベース となる共通の艦体フレームを「高速支援艦」と呼称します。
 また、上記高速輸送艦、高速補給艦及び工作艦はかなりの大型艦となることが予想され、 あまり多くの隻数を建造することはできないと考えています。
 これらの艦は必要な時に迅速に集中運用する機動運用部隊として整備することを考えて います。即ち「支援艦隊」の整備です。
 従い、現用艦であるキャリーバード級第一世代輸送艦(DTI-01s)、及びサプライバード級 第二世代補給艦(DSI-02s)は退役せず、これまで通り艦隊編成に加わり運用を継続します。