戦略研究所
                   
ステルス艦の整備
 先般、外交議事上でステルス艦についての議論が交わされました。
 ステルス軍用機が複数の国で実用化されつつある現代を鑑みるに、将来の宇宙艦隊の ラインナップにステルス艦を加えることに違和感は無い、というわけです。
 もちろん、現代の最新のコンセプトがステルスであるわけですから、将来はまた 異なるコンセプトがトレンドとなっているかもしれません。
 が、それを予見できるほどわたしたちの目は遠くを見通せないので、せめて現代の 流れに追いつくため、ステルス艦を実用化しよう、と考えているわけです。

 さて、そのステルス艦ですが、先ずは適用範囲を明らかにしておかなければ なりません。
 これについては外交議事でも意識合わせができていますが、汎用的に宇宙艦に適用 するのではなく、特定の艦種に適用すべき、と思料しています。
 他の軍艦についてもステルス「性」を意識したデザインとしていくことは かまいませんが、「ステルス艦」と明言できるほどステルス性能を最重視した艦は、 限定された範囲にとどめるべき、と言う結論に至りました。
 そうでないと、ステルス機能が一般化した時点で検出機能も高度化が進み、それは もはや特筆すべき機能ではなくなるから、というのがその論拠です。

 次に、その用途です。
 上述の通り適用範囲が限定されることと、その機能が他者加害ではなく自己掩蔽に あることから、用途としてはあまり論を待つ必要もないでしょう。
 すなわち、偵察艦です。
 偵察艦は言うまでもなく、ステルス機能が本領を発揮する最も好適な艦種でしょう。
 敵領域に侵入し、その情報を収集し安全に帰還する。
 その為、武装は最小限度でよく、汎用戦闘艦とは異なり数を求めず特定の目的の ために専用に設計・開発することが許される稀少艦種であり、偵察艦こそ、ステルス機能を 有することが求められる艦である、と思料します。
 敵領域に侵入することが前提となることから、これまでの連邦の偵察艦は、 ステルス艦化された暁には「侵透偵察艦」とその呼称も変更することになります。

 最後に、ステルス機能のメカニズムについて、です。
 この件については外交議事で最も多くの時間を割きましたが、結局は無難な結論、 すなわち形態論的にステルス機能を実現する、というところに落ち着きました(小職が 誘導した、というキライもありますが)。
 ただ、それでは結局、四角錐などののっぺりしたデザインにしてお終い、という ことになってしまいます。それはそれで悲しいですね。
 そこで、連邦のステルス技術はどうあるべきか、いろいろ考えました。
 あまり奇をてらわないようにしつつ、ある程度の独自性を出す。考えたのが 干渉電磁線です。
 極めて強い電磁線で、入射してくるレーダー波を数度の角度で偏向させます。
 そして角度を変えつつ電磁線を通り抜けたレーダー波が艦体で反射したあと、再び 電磁線でさらに数度偏向、また一部は回折し減衰する、というメカニズムでレーダー波の 発射源に帰っていくことを抑止するシステムです。
 この電磁線は入射してくるレーダー波が送信元に帰っていく角度に近づいた場合に 展長する、という反応性のシステムにすることを考えました。これで、四六時中 電磁線を張り続ける必要から解放されます。
 このシステムは、艦体の外側に干渉電磁線の膜を展長しなければならず、構造上 どのような艦種にも実装できるわけではありません。
 それゆえ、ステルス艦としての特殊な設計となるという前提にも合致します。
 これらをまとめて、連邦独自のステルス技術
 「反応遮蔽:リアクティブステルス
と呼称します。
 記事だけでは分かり難いので、いずれ「連邦の技術」のコーナーに図解入りでその 仕組みを掲載します。