戦略研究所
                   
救難関連機材の整備
 先般、外交議事上で、ブルーウォーターネイビー、ブラウンウォーターネイビーに求められる 要素が議論の俎上に上りました。
 言うまでもなく、ブラウンウォーターネイビーとは海水が灰色の浅海域領域でのみ活動する ことができる海軍、すなわち沿岸海軍のことを指してこのように呼ばれます。
 一方、ブルーウォーターネイビーは紺碧の大洋を渡り、遠く遠隔地での行動を可能にする海軍 のことを指してこのように呼称されます。
 その大きな違いは、正面戦力の差と共に、補助艦艇による艦隊の滞洋支援能力の充実が挙げ られると考えます。
 すなわち補給(給油、給糧、給兵)能力、遠距離通信能力、海洋観測能力、そして遠距離捜索 ・救難能力であるといえるでしょう。
 互いに数光年のオーダで隔絶された複数の星系を領有する連邦はその防衛戦略上、麾下の 宇宙艦隊について、ブルーウォーターネイビーを指向しています。
 ブルーウォーターネイビーを指向する連邦には、上記に列挙した能力のうち救難能力が欠如 しています。
 端的にいうと、補給艦、通信中継艦、海洋観測艦、広域哨戒艦は整備されていますが救難艦 が存在しない、ということです。
 連邦はその宇宙艦隊の形態としてブルーウォーターネイビーたるべきであるという目標を 達するため、また、国際捜索救難条約の履行能力を確実なものとするため、連邦市民、および 宇宙艦隊職員の生命・財産を保護し、またSAR条約締約国市民の生命・財産を保護する事を目的 とした救難能力を保持することとします。
 ところで、救難の現場は宇宙空間です。その中で、破壊・故障した宇宙船や空間施設等の内部 に取り残された人員を救助し、重要器物等を回収することが主な任務となると考えます。
 そのような中での救難資機材に求められる機能を列挙すると以下のように整理できるかと考え ます。
 @残骸の漂う空間で活動することが想定される救難機材は小回りの効く大きさが求められる
 A現場でのある程度の工事作業能力(残骸・部材の排除等)が必要になる
 B大気のない世界での救難であるため、「消火」の機能はほとんど必要とはされない
 C内部の空気の漏出を停止させるゲル状の応急固着剤を吹き付ける放水銃ならぬ「放液銃」
  は必要
 D船体や施設の外壁の状態を精査するサーチライト状のスキャナが必要
 E強制的に内部に進入・また内部から脱出するための延伸型ボーディングチューブシステム
  が必要
 F目標が漂流している場合に定点係止するためのトラクタービーム照射機能が必要

 以上のような機能・形態を備えたものとする必要があると考えます。
 @の前提に従い、現場での実質的な救難活動はBクラス艇で実現することになると考えます。
 上記のような運用コンセプトを元に、救難システムのデザインコンセプトは以下のようなもの となるでしょう。
 @救難活動専用の救難艇を整備する
 A救難艇を現場まで携行する救難艦を整備する
 B救難艦は救難母艦としての性格を帯び、現場での救難基地として機能し単艦での救難活動
  を主たる行動様式とはしない。
 Cまた、救難艦は専用艦を新規に設計・開発する時間がなく、先ずはその整備が急務である
  為、キャリーバード級輸送艦(DTI-01s)に救難艇のドッキングアクセサリを取り付けた構造
  をベースとし、早期に実現する。

 以上のコンセプトの元、救難艦・救難艇を整備しますが、同艦は宇宙艦隊直轄組織である
海洋業務群に配備し、同群により運用させることとします。